洋上小学校の目的は、海に囲まれた島国日本を外から見つめることです。日本の持っている力、美しさに気づくことです。それが一人一人の足下を見つめることになり、自分を見つめることになります。そうやって、自分の大切さに気づかせたいのです。
今回の震災から、自然とは何かを考えさせられる機会を与えられました。震災直後には、言葉も壊れて押し流されてしまいました。感情が真空になっていました。しかし、今は少し余裕が生まれ、様々な言葉、感情がせめぎ合い、収拾がつかないくらいになりました。
4月の初め、「洋上小学校をやるのですか」という質問を6年の先生から受けました。まだまだ、世論は被災した人たちに心を合わせ、喪に服すべきだという意見が多かった時です。私は、答えました。やるかやらないかの議論でなく、どうしたらできるかを話し合って欲しいと。洋上小学校は、「派手なことをする・している」と見られがちです。そうではありません。自分を大切にできる人は、他の人をも大切にできます。だから、洋上小学校は子ども達にとって必要な行事なのです。
目の前にいる子どもの目線で考える。大人の都合で考えない。そもそも何のために洋上小学校は作られたのか。もう一度原点に立ち返る時がきました。この洋上小学校は、保護者の皆様ご理解と、先生たちの不断の努力で続けてきました。そして、初等部の子どもたち、卒業生に「自分を大切にする」というメッセージを送り続けています。今年の6年生の子ども達にも、洋上小学校で「自分」という存在の大切さに出合ってきてほしいと願っています。
青山学院初等部 部長 島根 照夫