1972(昭和47)年5月30日、初等部の校旗をマストに掲げた「かとれあ丸」が出航しました。これが洋上小学校の始まりです。6年生が全員参加して、8泊9日の航程で毎年行われている行事です。船内活動、寄港地などでの活動を通して、海への畏敬の念、様々な人や文化遺産・自然との出会い、人との関わりの大切さを学ぶ、伝統ある画期的な魅力のある行事のひとつです。
目的
- ・海に囲まれた日本の子どもとして大海に乗り出し、その美しさと力強さを経験する。
- ・洋上を学習の場として船内活動に取り組み、渋谷キャンパスに生かされるような経験を積む。
- ・寄港地の風土や文化遺産にふれ、さまざまな人と出会う。
- ・あらゆる活動に小さな乗組員として積極的に取り組み、新しい自分を発見していく。
主題聖句
「求めなさい。そうすれば、与えられる。」
マタイによる福音書7章7節
初等部長のご挨拶
洋上小学校の目的は、海に囲まれた島国日本を外から見つめることです。日本の持っている力、美しさに気づくことです。それが一人一人の足下を見つめることになり、自分を見つめることになります。そうやって、自分の大切さに気づかせたいのです。
今回の震災から、自然とは何かを考えさせられる機会を与えられました。震災直後には、言葉も壊れて押し流されてしまいました。感情が真空になっていました。しかし、今は少し余裕が生まれ、様々な言葉、感情がせめぎ合い、収拾がつかないくらいになりました。
4月の初め、「洋上小学校をやるのですか」という質問を6年の先生から受けました。まだまだ、世論は被災した人たちに心を合わせ、喪に服すべきだという意見が多かった時です。私は、答えました。やるかやらないかの議論でなく、どうしたらできるかを話し合って欲しいと。洋上小学校は、「派手なことをする・している」と見られがちです。そうではありません。自分を大切にできる人は、他の人をも大切にできます。だから、洋上小学校は子ども達にとって必要な行事なのです。
目の前にいる子どもの目線で考える。大人の都合で考えない。そもそも何のために洋上小学校は作られたのか。もう一度原点に立ち返る時がきました。この洋上小学校は、保護者の皆様ご理解と、先生たちの不断の努力で続けてきました。そして、初等部の子どもたち、卒業生に「自分を大切にする」というメッセージを送り続けています。今年の6年生の子ども達にも、洋上小学校で「自分」という存在の大切さに出合ってきてほしいと願っています。
青山学院初等部 部長 島根 照夫
校長のご挨拶
主は与え、主は奪う――ヨブ記が描く旧約聖書の世界が、こんなにも間近に迫って感じられたことはありませんでした。
家や学校、愛する人々、そこにあった光景の全てが失われ、奪われた東日本大震災。"日常生活"が、いかに多くのもので成り立っているかを、わたし達は考えさせられました。それが本当に必要なものかどうかを、選び取っていかなければならないと、多くの人が考えたことでしょう。
洋上小学校に行く"必要がある"。私たち自身がそう確信することなしに、子ども達と一緒に大海原に漕ぎ出すことはできないと思いました。「洋上小学校の目的」を何度も読み直しました。「自然の美しさと力強さに触れ、畏れ敬う気持ちを持つ」「様々な人と出会い、他者を通して新しい自分に出会い、かけがえのない自分の大切さに気づく」2011年の3月11日を経たわたし達だからこそ、この目的を達成しなければならないはずです。37回目の洋上小学校の準備は、こうして始まりました。
目の前に海が広がる海の中を船が進み、その先に大地がある。宇宙に出かけたロケットが何年もかけて戻ってくるようになったけれど、目の前に広がった海は、こんなに広い――かめりあ丸で過ごす9日間を経て、6年生の一人ひとりが、目的を達成していくことでしょう。
今年は、高知、種子島、福江島、広島、熊野に寄港する予定です。空気や水、食物にさえ不安を感じる毎日にあって、子ども達を送り出して下さった保護者の皆様、見えるところ、見えないところでこの行事を支えて下さっている全ての方に感謝します。そして、その全てを与えてくださる神様に感謝して、行ってまいります。
第37回 洋上小学校校長
野かおり









